日本音楽療法学会
第16号 日本音楽療法学会ニュース
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世界大会印象記
第12回世界音楽療法大会印象記
国際交流委員会 委員長 佐治順子

3年ごとに開催される世界音楽療法第12回大会が2008年7 月22日−26日に、タンゴ発祥の地であるアルゼンチンのブエ ノス・アイレス市で開催された。大会のテーマは、「音楽、 文化、音、健康」であった。会場は市の中央高台に位置する パルテノン宮殿で、現在は国立ブエノス・アイレス大学法学 部が一部を校舎として利用しており、地下階には学生食堂も 設置されていた。大会の受付会場には、左右に巨大な人物石 像が一体ずつ置かれ、メイン会場には正面壁に大きな歴史的 絵画が飾られ、絨毯敷きの座席に左右階段式席で、かつては 国家の重要な集会の場であり、会議場であったことが偲ばれ る建物であった。このような歴史的遺産建造物を現在も実際 に利用し、かつ第12回世界音楽療法大会の会場に無償提供し てくれるブエノス・アイレス大学の学会への理解と大会実行 関係者の尽力に対し、心から感謝の意を表したい。

世界音楽療法連盟(WFMT) 会長であり、ブエノス・ア イレス大学音楽療法コース学科長であるDr. G. Wagner 氏 によれば、「本大会の参加者は合計で約1,200人、その中約500人が南アメリカ大陸からの参加で、残りの約700人がその 他の国々からの参加であり、前回よりも参加者数が多かった」 とのことである。とりわけ、地元参加者に対する配慮として、 多言語間の相互理解の体制がしっかりしていて、今回の公用 語であるスペイン語と英語間の同時通訳、あるいは逐語通訳 が全ての会場に配置されており、主催者の学会に対する熱意 が感じられた。それは、筆者が、かつてオックスフォード大 学で開催された第10回大会から連続3回の口頭発表の機会 を得たが、第10、11回とも公用語は、開催国が英語圏であっ たせいか、英語のみであったことと対照的であった。筆者が 実行委員の一人に聞いたところでは「通訳者たちはMT ボ ランティアではなく、専門の通訳者である。従って大会予算 の大半はその費用に使われたために、プログラム印刷(A5 版に縮小) や昼食費などは極力切り詰めた」とのことであっ た。これは、今大会の1/3以上の出席者が南アメリカから の参加であったが、彼らにとってはまことに有効なサービス であり、それ故に、今大会は、音楽療法を英語圏だけでない 国々の音楽療法士らとも共有できるすばらしい場を提供した という意味で画期的な催しであったと思う。

第1日目の受付と開会式典に続いて、第2日目から第5日 目まで、毎朝9:00から全体企画(4件)、10:45から口頭 発表(約220件)、その他ワークショップ、ラウンドテーブル、 シンポジウムが大小18会場で実施された。また第2日目から 第4日目まで10:45と16:15からポスター発表(約105件) が展示場ホールで、そして毎18:15から特別企画、タンゴの 歴史や即興リズム演奏などの音楽活動も好評であった。中で も日本の大会と異なる点は、口頭発表の時間が質疑を含めて 45分用意されていたことである。さらに発表後30分間の休憩 が随時配置されていたため、発表後の質問にもゆっくり意見 を交わすことが可能であった。たとえば筆者の場合でいえば、 発表場所が同時通訳のあるメイン会場であったため、45分間 に充分に話すことができたし、仮に逐語通訳の会場での口頭 発表であったとしても、20−25分は話すことができ、発表後 も休憩時間を利用して質問応答が確保されていることである。

第12回大会では、日本人の活躍も目立った。口頭発表が8 件、ポスター、シンポジウム発表も8件あり、年々発表数と 共にその内容も充実してきたと評価されている。大会への参 加者は合計で20数名と思われ、アジア圏の中では最も多い参 加であった。

一方筆者は、2005−2008年WFMT の臨床実践委員長と大 役の役員も担っていたので、今回の世界大会の運営面につい ても報告しておく。2006年秋に締め切られた抄録は500件以 上であった。その査読審査に2007年12〜1月、WFMT 役員 全員も分担協力した。実際の大会実行委員会は、アルゼンチ ン音楽療法学会とブエノス・アイレス大学心理学および音楽 療法学科の教員および学生が担当した。大会発表者への最終 合格通知が、大会約1ヶ月前であったこと、会場に見取り図 がなかったことなどは、全く気にもしておらず、これもアル ゼンチンのお国柄とでもいえそうである。大会期間中に開催 されたWFMT 役員会議は、毎回3〜6時間に及ぶもので、 第1、第2、第4日目に実施された。それは、これまで懸案 となっていたWFMT 組織の再編成や、開催国申請時期など に関する規約改正が審議されたためであった。そして第13回 大会は、2011年7月にカナダのトロントで開催されることが 決定した。2014年に開催される第14回大会の開催国と日時申 請は、今回の規約改正により、開催4年前、つまり2010年7 月までに開催立候補の届けをWFMT 会長へ提出しなければ ならない。翌2011年に開催される第13回大会の第1日目に、 計画案に基くプレゼンテーションの後、最終決定される。

この3年間WFMT の臨床人選委員長として、第12回大会 や規約改正、次期WCMT 開催国のなどの重要審議決定に関 わらせてもらい、WFMT 役員たちが日本を含むアジアでの 世界大会開催を、心から歓迎していることを強く感じた。
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