一般社団法人 日本音楽療法学会
第14号 日本音楽療法学会ニュース
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国家資格推進に関する現状と展望
〜日本音楽療法学会第7回総会における報告〜
国家資格推進委員会
委員長 村井靖児

日本音楽療法学会第7回総会において、国家資格推進に関 する現状と展望に関する報告をしました。以下に、その報告 原稿の全文を掲載いたします。また、追記として、総会席上 におけるご質問に対して常任理事がお答えした内容を、より 整理した形で記述しました。併せてお読みいただければ幸い に存じます。
私どもは、国家資格推進委員会として本年8月に、全会員 に対して「国家資格化についてのお知らせ」の文章をお届け しました。そこで報告しましたように新理事会は、一丸となっ て国家資格化を進める決議を行いました。それを、この総会 で会員の皆様全体にも決意していただくようにお願いするの が、本日の私の報告の主旨です。
この理事会の決定を受けまして国家資格推進委員会が進め ている作業は、次のようなものです。

(1) 音楽療法推進議員連盟(議連) との連携
(2) 音楽療法団体との連携の強化
(3) 音楽療法以外の各界の専門家達にも音楽療法を応援して もらう
(4) 音楽療法の有用性をさらに明確なものにする
(5) 学会員に国家資格化に向けての団結を促し、積極的な国 家資格推進運動を展開する

この中で、まず(2)についてご説明申し上げますが、関連団 体として全国音楽療法士養成協議会に加え、都道府県レベル で音楽療法士の養成や活用に取り組んでこられた岐阜県と兵 庫県に呼びかけ、音楽療法推進懇話会が結成されました。
そこで話し合いました結果、音楽療法を受けたくても受け られない人々の問題、音楽療法士をめざしても職業として確 立しにくい問題、これらの問題の一刻も早い解決のために、 できることは全てやって国家資格を実現させるべく請願署名 に向けて準備を進めることになりました。
この方針は、一昨日の理事会でも、評議員会でも話し合い まして、本日の総会で会員の皆さんに呼びかけることになり ました。国家資格化は、私たち自身の課題であることを肝に 銘じたいと思います。私たちが立ち上がってこそ、議連も動 けるわけです。もう一度、申し上げておきます。音楽療法士 の国家資格化をこれまで以上に全力をあげて進めていきましょ う。

次に、本日承認していただきたいことは以下の3項目です。

(1) 本年5月6日の第24回理事会での決議文の承認
(2) 福祉の資格としての国家資格とすることの承認
(3) 「音楽療法士」の名称の変更がありうることに対する承 認

では、一つ一つについて、ご説明申し上げます。先ず、決 議文を紹介いたします。
音楽療法士(仮称) の国家資格化についての決議
 日本音楽療法学会理事会は、音楽療法推進議員連盟(以下 議連) によって作成された「音楽療法士(仮称) 法案要綱 (案)」に沿って、他の関連団体と連携をはかり、議連の指導 と協力のもとに、今後可能な限り早期の音楽療法士(仮称) の国家資格化の実現に向けて努力する。
 以上日本音楽療法学会第24回理事会において決議する。


次に、会員の皆様にご了解していただきたいことは、(2)に 挙げました福祉の資格としての国家資格についてです。医療 領域を含んだ資格を我々も会員の皆様方も望んでいますが、 それを前面に押していきますと、現状では国家資格化はまっ たくと言えるほど不可能になります。国家資格化は、10年20年たっても無理でしょう。その理由を以下に述べます。
日常の臨床では、医療と福祉の区別はなく、同時に行うこ とがありますし、心と身体を同時に見ることも多いのですが、 法律としてははっきりと分けることになっています。現在ま でに厚生労働省の管轄する国家資格として、医療の領域では 身体と精神の領域においてすでに国家資格を持つ職が存在し ており、福祉の領域でも身体の障害を対象とした専門職が存 在しております。新しく資格を作るためには、関連するすべ ての領域の同意が必要です。たとえひとつの団体の反対があっ ても新しい資格は成立しません。このような状況にあって福 祉領域の精神を対象とした資格が、国家資格として成立する ために、わずかに残された道なのです。
この総会で皆様に再確認していただきたいことは、本学会 として福祉領域の国家資格をめざすということです。先に挙 げました理事会決議の「議連によって作成された『音楽療法 士(仮称) 法案要綱(案)』に沿って」ということが、福祉 領域の国家資格化を意味しております。
しかし、福祉領域の資格になったとしても、現在、教育、 医療など、福祉以外の領域ではたらく音楽療法士の皆さまも、 従来通りの仕事が続けられる、ということを強調したいと思 います。そして、国家資格化によって社会的認知が高まり、 実践の場は今以上に広がる可能性があります。

3点目としてご相談申し上げたいことは、「療法」という 言葉の問題です。まず名称に関するこれまでの経緯を簡単に 説明しましょう。
図
私たちは最初「音楽療法士」という言葉で運動を進めてま いりました。その後、議連から提示されたのは「音楽保健福 祉士」という名称での国家資格化でした。これを受けて当時 の理事会でも評議員会でも音楽療法の社会的定着が大切であ ると考え、「音楽保健福祉士」の名称で国家資格化を進める ことを決議しました。たとえ名称がそうなったとしても、仕 事の内容や養成教育の内容も音楽療法であることに変わりは なく、国家資格の実現のためには音楽保健福祉士という名称 をとることが賢明であると判断したからです。
しかしながら、その後、聖徳大学で開催しました第3回学 術大会に斉藤十朗議連会長をお招きした際に、学会が願うな ら音楽療法士の名称でも良いと言っていただきまして、期待 を高めて今日まで来たわけです。
ところが、この「音楽療法士」という名称に関して、問題 が再浮上しました。国家資格化のためには、関連団体の承認 が不可欠となってきますが、昨年の夏に関連団体をまわった 際に、いくつかの団体から「療法」は医療の概念ではないか という疑問が出されました。私たちは「音楽療法士」という 名称にあくまでもこだわっていきたいのですが、法制化の過 程で「療法」という名称の修正を求められることも想定して おかなければなりません。

そこで、法制化の終盤におきまして名称の修正が求められ た場合ですが、名称にこだわって国家資格化を断念するのは 間違っていると、私は考えています。音楽療法を必要として いる人に音楽療法を届けるために、また、この素晴らしい仕 事を実践する人たちの社会的な地位を安定させるために、国 家資格化が必要なのです。「音楽療法士」という名称はもち ろん大切ですが、それよりももっと大切なことは、日本の中 で、音楽療法を必要としている人の全てにこのサービスがき ちんと届いていくこと、そして、それが1日でも早く実現す ることではないでしょうか。ですから、ここは議連にお任せ して可能な名称で国家資格を実現してもらうという姿勢にご 理解を頂きたいのです。以上が、資格の名称に関する経緯で す。

誤解があるといけないので繰り返します。いま、音楽療法 士名称の修正を提案しているわけではありません。あらゆる 可能性を考えまして会員の皆様に将来的な検討課題について 情報開示をしているわけです。ですから、現時点で名称にこ だわるより、国家資格に向けて一歩を踏み出していただくよ うにご提案申し上げます。 たとえ、国家資格の名称が音楽療法士でなくなった場合で も、私たちの学会が、国家資格と平行して、たとえば上位資 格としての「音楽療法士」資格を認定していくという構想も あり得ます。再度申し上げますが、私たちは、あくまでも音 楽療法士という名称にこだわりながら国家資格化を目指して いきます。
そして、国家資格が実現した場合に、試験を受けて果たし て受かるのだろうか、これまでの認定資格はどうなるのだろ うか、などといった懸念が学会員から出ていると聞きますが、 学会としてはこの対策として、国家試験受験のための講習会 を開催し、サポート体制を整えていく所存です。

全国のさまざまな地域で、様々な対象者が音楽療法を求め ています。また、そこで関わっている音楽療法士である皆様 の社会的な認知や活動のための足場の確保のためにも、国家 資格の成立は緊急課題なのです。一日も早い国家資格化の実 現に向けて、会員の皆様と力を結集して取り組んでいきたい と考えています。以上で、私の報告を終えます。ありがとう ございました。
追記:
「音楽療法士」以外の名称で国家資格化がなされた場合、 「音楽療法」という専門領域のアイデンティティが揺らいで しまうのではないか、また、福祉の資格となった場合、福祉 以外の領域で実践を行なうことが阻害されるのではないか、 という懸念をお持ちの学会員もいらっしゃるかもしれません。 この事に関する、国家資格推進委員会および常任理事会の見 解を以下に記述したいと思います。
社会においては、「音楽を健康に役立てるための、様々な 営み」が行なわれております。病院や施設での音楽家の慰問 演奏会や、「健康コンサート」などの実践はそれにあたるで しょう(図の大きな楕円の部分)。
こうした、「音楽を健康に役立てる営み」の一部に、音楽 療法の専門家が行なう、特定個人の健康の確実な増進・維持・ 回復を目指す、計画的な行為が存在します。これが「音楽療 法」であると思います(図における、点線の楕円の内側)。
音楽療法は、大変守備範囲の広い領域です。医療、福祉、 教育、保健、など多くの領域で実践が行なわれてきました。 近年では、地域社会の変革を目指す実践も行なわれるように なってきました(コミュニティ音楽療法)。
音楽療法が実践されている全ての守備範囲をカバーするよ うな国家資格が実現されることは、それを我々がどんなに望 んだとしても、大変困難であると言わざるを得ません。また、 新たな国家資格が作られるのは、従来からある国家資格によっ てはサービスが行なわれておらず、なおかつサービスが行な われることが必要な領域についてなされるのです。国家資格 化は、“音楽療法士が求める資格”ではなく、“国民に必要 であると国が認めた資格”にのみ法制化されるのです。コミュ ニティ音楽療法のような、社会変革を目指した音楽療法が素 晴らしい仕事であることは間違いありませんが、そのような 仕事の内容を「国家が認める」ことは、現時点では極めて難 しいでしょう。
国家資格としての可能性があるのは、現在実践されている 「音楽療法」の領域の一部分です(図における、最も小さな 丸の内部)。ですが、既に実践されている、福祉領域以外の 音楽療法(教育、医療、コミュニティ音楽療法その他) の価 値が低まるわけでも、制限されるわけでもありません。音楽 療法という専門領域が揺らぐことはありません。仮に、国家 資格の名称が「音楽療法士」でなかったとしても、我が国に おける「音楽療法」という学問領域、支援の実践は、そのま ま存続します。言い換えますと、私たちが音楽療法士として 実践している広い働きの領域の中に、私たち自身の意思で、 将来決まるであろう名前で、国家資格という音楽療法の拠点 を作ろうということです。それは、福祉の資格でない国家資 格化は、“現時点では殆ど不可能である”という現状認識が あるからです。
また、先に述べたように、国家資格が実現した場合でも、 上位資格としての学会認定「音楽療法士」の認定制度を継続 していくこともあり得ます。
図
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